Λ-1/Lambda-2022 の拡張(10)ASCII キーボード基板

表題の「ASCII キーボード」は以前の投稿で「パラレルインターフェイスキーボード」と呼んでいたものと同じです。これをプリント基板化しました。リファレンスモデルである ALPS AKB-3420 にあやかって “LMD-3420” と名付けました。完全にまねっこですが、本家の方は廃版になって久しいのでまあいいんじゃないかとうやむやにしておきます。

基板化にあたってシフトロックインジケータと i2c OLED ディスプレイを追加しています。

既存の XVX キーキャップを使用

LMD-3420 のキー物理レイアウトは AKB-3420 に準拠します。右端列の 5 個の独立スイッチを再現したかったためです。独立スイッチはキーマトリクスに含まれずそれぞれ個別に GND に落ちる配線になっており、システム割込みやリセットに使用します。右から二列目の 5 個のキーにもリレジェンダブルキーキャップが使われており外見は右端列キーと同一ですが、この列は通常のキーマトリクスに含まれます。AKB-3420 ではコントロールコードが割り当てられていますが、LMD-3420 では現代のキーボードで標準装備されているバッククォート、バックスラッシュなどの文字種を割り当てています。このあたりは qmk ファームウェアで自由に設定できます。

物理レイアウトこそ AKB-3420 に一致させたものの、論理レイアウトは ANSI 配列に変更してあります。

上:AKB-3420 キー配列、下:LMD-3420 キー配列

AKB-3420 と異なる点がもう一つあり、今回使用したキースイッチは Cherry MX 互換品です。AKB-3420 で使用されていた ALPS SKCC キースイッチは現在ほぼ入手不可なため今回の基板では採用しませんでした。ALPS SKCC は Apple IIe や Apple III にも使われており個人的には親しみ深いスイッチなのですが、まさかこれらのビンテージ機種から部品取りするわけにもいきません。このため今回の基板設計では現役で流通している Cherry MX 対応としました。

qmk ファームウェアに追加したカスタムコードで GPIO Expander PCF8574A を制御し、パラレルインターフェイス端子へ ASCII コードと Strobe 信号を出力します。インターフェイスとして AKB-3420、Λ-1、Apple II、および USB の 4 種類を備えており、それぞれ仕様が異なります。Apple II と AKB-3420/Λ-1 では文字コードの正論理・負論理が異なるのですが、これはファームウェアを書き換えることで切り替えます。なお Apple II インターフェイスは未テストですので、万が一この基板で動かなければリビジョンアップということになります。

LMD-3420 基板。上に乗せてあるのは比較用の SBC サイズ(80mm x 100mm)基板

基板の製造と組み立て

基板製造は JLCPCB に発注しました。このサイズの基板が 5 枚で $26、同時にスイッチプレートも設計して発注しました。しかしフルキーのスイッチプレートをガラスエポキシ板で作ると特殊形状の穴加工が多すぎて追加料金が発生します。さらにこのサイズの基板やプレートだと重さに比例して送料が増え、トータルコストは $90 弱まで膨れ上がりました。まとめて注文するメリットはそれほどないようです。それでもたとえばアクリル製スイッチプレートを別業者に頼んだ場合よりも総額では安価になります。

この基板とキースイッチ、スイッチプレート、MCU(RPi Pico)などを組み合わせてキーボードとして機能するところまで組み立てました。AKB-3420 の元設計だと角度を付けた 2 本の金属製の脚を基板の左右両端に取り付けるのですが、今回の設計では基板、スイッチプレートともガラエポ製であるため左右 2 本の脚だけでは剛性的に不十分で、中央付近に補助的な脚を追加する必要があると思われます(基板上にネジ穴だけは用意してあります)。これら取り付け脚やケースについては 3D プリントで作る予定ですがその作業は次回以降に先送りすることにして、まずは通電テストを目指し、基板むき出しのまま最低限の組み立てを完了させます。

スイッチプレートもほぼ同サイズ

キーキャップ問題

キーキャップの選択は悩みどころで、現在は XVX プロファイルの既製品を流用しているのですが随所にサイズの合わない部分が発生します。特に AKB-3420 のキー配列を再現する場合は 1.5u のキーキャップがすべての行で必要になる点、また当時の常でスペースバーが 8u の長いものである点が問題となります。実用上は現状でもあまり困らないのですが、将来ケースを取り付けた際にきれいに長方形に収まるようにしたいと考えています。以下のキーが不足します。

  • Backspace (R4, 1.5u)
  • ’Q’ (R3, 1.5u)
  • LF (R3, 1u)
  • Ctrl (R2, 1u)
  • Tab (R1, 1.5u)
  • Caps (R1, 1u)
  • Space (conv., 8u)
  • Esc (R1, 1u)

なお行名は下から R1, R1, R2, R3, R4 としてあります。キーキャップの行名は上から R1, R2, … と数える流儀と下から数える流儀があって統一されていないようです。

不足キーキャップはいずれ 3D プリントでカスタム設計することにしますが、上に挙げたキーキャップをすべて作り直すと R1〜R4 までまんべんなく設計する必要があり、作業量を考えると二の足を踏みます。しかし、実は同行・同サイズのキーはキーキャップセット内を探せば割とあるのです。レジェンド刻印のみ異なるキーキャップを再利用すればいいわけです。こういったキーキャップの再利用を検討に含めるとカスタムメイドが必要なキーキャップの数を減らせます。

同行同サイズのキーキャップを代用して可能な限り外形を合わせた状態

レジェンド刻印を無視すれば次のキーが不足するということになります。

  • Backspace: R4, 1.5u
  • R-Shift: R1, 2u(キーキャップセットによる)
  • Space: Convex, 8u

また今回は XVX プロファイルのキーキャップセットを使いましたが、これは必要となる 1.5u、2u のキーキャップがそれなりに揃っているという理由で選択したものです。最終的にいくつかのキーキャップを自作して補充するのであればよりクラシックな SA プロファイルのキーキャップセットを選択するという手もあり、このあたりはまだ決めかねています。

リファレンスモデル ALPS AKB-3420

Λ-1 接続テスト

組み上がったキーボードを 16 ピンフラットケーブル(IDC 端子)を使ってΛ-1 コンピュータに接続します。qmk ファームウェアの設定は以前プログラムしたものがほぼそのまま流用できたのでこの接続テストはハードウェア、ソフトウェアとも大きな修正なく完了しました。キーボード右上端の独立スイッチを使った ATTN キー(インタラプトキー)によるモニタプロンプト呼び出しもできます。なお Λ-1 コンソールは小文字非対応なので CAPS LOCK を常にオンにする必要があります。

Λ-1 に接続してテスト。右の大きなディスプレイは使っていません

今後の計画

基本的な動作を確認できたので、完成に向けて次の作業を進めようと思います。

  • 底面と支柱の設計・プリント
  • 不足キーキャップの設計・検証と発注
  • ケースの設計と発注(外装シートも含む)
  • Apple II 接続テスト

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