Λ-1/Lambda-2022 の拡張(9)カセットインターフェイス

マイコンシステム Λ-1 は外部記憶装置としてカセットテープレコーダを使います。データ保存にテープレコーダを利用する手法は特に珍しいものではなく、1980 年前後の 8 ビットパソコンでは標準的な記録方式でした。コモドール 8 ビットマシン(PET/CBM/VIC/C64)や MZ-80 のようにデジタル信号専用インターフェイスのカセットデッキもあったようですが、多くは普通の音楽録再用デッキ(ラジカセ含む)の入出力端子に接続することを前提とした設計でした。Λ-1 も市販のカセットデッキを外付けする仕組みです。

カセットデッキ回路は音声信号処理を目的とするので 15 kHz 以上の成分の録音・再生は保証されません。接続方式によっては出力の位相が反転する可能性もあります。これらの条件に適した信号を変調・復調できるインターフェイス回路が必要です。

出力信号のソースは PIA の出力ポートなので 5Vp-p の矩形波です。パルス幅の違いでビット値 0 と 1 を表し、0 が 1400us、1 が 700us のパルス幅となります。なお実際には 1 ビットのデータあたり 1 周期分を出力するのでビット値 0 の出力に 2800us、ビット値 1 の出力に 1400us を要します。

「マイコン手づくり塾」記載の回路を参考にインターフェイスを組みました。回路図は次のとおりです。

PIA に接続する他の回路、つまりキーボード入力ポートや K68-VDG の垂直同期信号入力ポートなどもこの回路図に含まれます。図の中央付近がテープレコーダ録音再生のための変復調回路ですが、面白いのはカセットテープから再生された音声信号をパルス幅測定に適した波形に加工する復調回路です。入力音声信号をクランプ回路でクリップしたあとでコンパレータを通して矩形波に整形するのですが、Λ-1 の設計ではコンパレータとしてオーディオレベルメータ用 IC の三洋 LB1405 を使います。レベルメータ LED を見ながら入力レベルを調節できます。

Lambda-2022 筐体に組み込んだ回路基板は次の画像のとおりです(筐体奥のユニバーサル基板)。

筐体背面パネルにカセットデッキ入出力用の端子を追加しました。次の画像のとおりです。

“DOUT” “DIN” “RMT” というラベルのある部分がカセットデッキ用端子です。通常はポータブルテープレコーダに接続するための 3.5mm/2.5mm 端子(ラベルよりも右側の部分)があれば十分ですが、左側に RCA 端子による入出力も追加してあります。今回はコンポ型のカセットデッキを使うのでこの RCA 端子を使って接続します。ステレオデッキの L チャンネルのみ使用します。

カセットデッキは SONY のエントリレベルモデルを中古で入手しました。今となっては 3 ヘッドの中堅機あたりでも中古価格は大差ないのでしょうが[注 1]、メカや回路がシンプルな方がメンテナンスが容易になり、またデータ信号波形に余計な色がつかなくて良いのではと考えました。当然ドルビー NR は無効にして録音します。

カセットデッキを使うのは久しぶりです。メンテを済ませてから手持ちの新旧テープを聴くなどしばらく寄り道をした後、デッキの録音レベルを調節しながらセーブ・ロードのテストを繰り返しました。ところがエラーがなかなか解消されません。

どうしたものかと書籍「マイコン手づくり塾」を読み返すと、カセットインターフェイス製作の章ではなく別のページの読者 Q&A コラムの中でトラブルシューティングとして説明されていたのが、回路図中 R5 の両端に 0.1uF 程度のスピードアップコンデンサを追加するという手法です。これが効果的だったようで、インターフェイスからデッキへの出力信号が正確なパルス幅を含む波形になりました。

それでもまだロード時にエラーが出るので、今度はデータ入力側にオシロスコープを繋いで設定を詰めていきました。最終的にまあまあ安定したと思われる設定での波形が下図のものです(CH1: デッキからのオーディオ出力信号、CH2: 復調後のデジタル信号波形)。

念のため録音後 24 時間ほどおいて再度テストしましたが同様にパスしました[注 2]。

当時オシロは高価な機器だったため、専門家以外が簡単に使えるものではありませんでした。こういったアナログ絡みの回路をオシロの助けなしに上手く動作させるには長時間のカットアンドトライが必要になったはずです。Λ-1 のカセットインターフェイス回路に LED レベルメータが組み込まれているのも、調整作業が少しでも簡単になるようにという配慮があってのことと思われます。

注:

1. eBay を覗いたらそんな事はありませんでした。3 ヘッドデッキはエントリレベルデッキに比べて少なくとも 3〜4 倍の値付けです。

2. セーブ・ロードの対象はダンプの前半 32 バイトのみなので、後半 32 バイトが変化していても問題はありません。

コメントを残す